
・subtlemix.com
クマムシとの想像力での死闘
先日、夕飯の時に、どういう話の流れだったか思い出せないですが、子どもと、
「いちばん強い虫は何か」
というような会話になりました。
その中で、私は、
「正確には虫ではないけど、クマムシという超強いのがいるよ」
「どんなの?」
「うーん・・・」
私はパソコンを開いて、以前、産経ニュースの記事を記した、
・最強の生物 クマムシの謎に迫る ゲノム解読し本格分析へ
2010年05月17日
というページに載せた下の図を見せました。
クマムシ

・産経ニュース
それを子どもは読み始めました。
子 「0.1ミリ・・・ちっちぇー。え? 天ぷらの温度でも死なないの?」
私 「そうです」
子 「マイナス 273度!・・・ってわからないや。どのくらい冷たいの?」
私 「氷よりもずっとずっと冷たい」
子 「7万5千気圧!・・・気圧って何?」
私 「要するに、思いっきりつぶされてもつぶれないと」
子 「かなづちで叩いたら?」
私 「たぶん死なない」
子 「斧で叩いたら?」
私 「たぶん死なない」
子 「机の脚でつぶしたら?」
私 「たぶん死なない」
子 「車でひいたら?」
私 「それは絶対に死なない」
子どもはどうしても、クマムシを殺したいようです。
私 「しかもね、このクマムシは、空気がなくても生きられるし、宇宙に行って帰ってきたこともあるんだよ」
子 「空気のない宇宙で生きてたの?」
私 「そう」
(参考記事)
宇宙線だけを浴びたクマムシたちは、地球に戻ると復活し、宇宙線を浴びていないクマムシと同様のペースで繁殖した。この無脊椎動物たちが宇宙空間でどのように身を守ったかは「謎のまま」だという。
(WIERD 2008.09.09)
子どもの顔に一瞬、クマムシへの敬意の表情が現れましたが、その気持ちと同時に「その強いヤツを絶対にやっつけてやる」という気持ちも強まったようです。
子 「ブルドーザーでつぶしたら」
私 「死なない」
子 「花火をバババッとかける」
私 「あ・・・」
子 「何?」
私 「それで死んじゃう」
上のクマムシの図の「クマムシが耐えた極限環境の記録」のうちの高温のほうは、
「高温 151度」
となっています。
これはこれで生物としては、確かに非常に高温まで耐えられているわけですが、火の温度というのはかなりのもので、ロウソクの火でも 1400度もあるのです。

・地球の記録
花火の温度は、花火の威力と危険度によりますと、
> 夏の夜になると子供達が楽しそうに遊んでいますが、この玩具花火の火薬が燃焼する温度はなんと1200度から 1500度にもなります。
線香花火でも 370度あるのだそう。

耐性温度が 151度までのクマムシは、線香花火にも勝てないのでした。

・sima-niger.net
ここで、ふと、
「というか、あらゆる生き物って、これくらいが限度なのでは?」
という「すべての生物は火に耐えられない」ことにあらためて注目します。
過酷な条件の環境で生きられる微生物を「極限環境微生物」などと呼びますが、この中で、高温でも生きられる微生物(好熱菌)というものを見てみますと、極限環境微生物 - Wikipedia によりますと、
超好熱性:80℃以上に至適増殖を示す生物。その大半が古細菌である。極度に高い温度を好むこれらの生物群は、高温に耐えうる強固なタンパク質および生体膜構造を有する。現在、最も高い生育温度は122℃である。
とありまして、極限環境微生物でも 122度くらいが限界のようです。
多細胞生物のクマムシが、極限環境微生物の耐性温度を超えているのはすごいですが、それでも、線香花火にも勝てないのが現実です。
DNA自体が高温に耐えられない
地球上の、ほぼすべての生命は DNA が基礎となってできているわけですが、 そもそも、DNA そのものが、それほど高い熱には耐えられないもののようです。
関西医科大学法医学講座ウェブサイトの「よくある質問」コーナーに「火葬された遺骨からDNA鑑定ができますか?」というものがあり、回答に以下のようにあります。
火葬場で荼毘にふされると、遺体には800〜1200℃の熱が加わります。軟部組織は灰となってなくなり、骨も灰化しています。このような熱が加わると、DNAは細かく分断されます。
このように分解したDNAの検査は、100 %不可能とは言えませんが、通常のDNA鑑定を行うのが極めて困難となります。
実際には、DNA は 100度くらいから分解が始まるようですので、ほとんどの地球の生物の作りは、そのあたりが限度ということになりそうです。
ほぼすべての生物は「熱に弱い」ことが、生命の「掟」として決まっているようです。
つまり、生物は「火」に勝てない。
最強のクマムシも、子どもたちの噴きだし花火の火の下では消滅してしまう。
この地球には、四大元素というものがあって、
・火
・空気
・水
・土
だそうですが、この中で、「生物を完全に消滅させられるのは火だけ」であることに気づきます。
しかし、そんな火も、水をかけられれば消えてしまう。
その水は、生命の維持ために大気と共に最も大事なものです。
また、火は空気なくては存在し得ません。
いずれにしても、子どもの想像が「花火」に及んだ時点で、クマムシとの対決では勝利を収め、そして、私たち人間はこの世で「火を操ることができる唯一の生物」であることにも気づくのでした。