2011年06月04日

天国という名の自動販売機本 - JAM と HEAVEN


東京に出てきたばかりの頃なので、1982年くらいですかね。

すぐに大学は行かなくなったんですけど、「なんかしたいなあ」と。

北海道でいろいろとやっていた友人知人は、ほぼ全員北海道に残っていて、一緒に東京に来た人はいなかったんです。なので、東京にはとりあえず知り合いは、ほぼいなかった。

「何をやればいいかなあ」と思っていた時に、中学高校の時によく読んでいた、自販機本というのがあって、それを作りたいなあと思ったんです。

女性でブログを読んでくださってらっしゃる方もいるので、何だか申し訳ないですが、要するに、自販機本というのは昔でいうエロ本のことなんですが、書店に置けない雑誌に関しては、当時は「雑誌専用の自動販売機」だけで売られているものも多かったんです。

この理由というのは「書店に置けないのだからすごい内容なのでは」等と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そういうわけではなく、きわめて実利的な理由でした。すなわち、書店で売られているすべての日本の雑誌には「雑誌コード」というものが存在しています。雑誌として販売するにはこの雑誌コードがないとダメで、基本的に書店等に置けないのです。

当時の超マイナー出版社には雑誌コードを持たない場合が多く、「これらは書籍ではありません」という意味で自動販売機で本が売られていました。本ではなく、グッズなどと同じ扱いとして売られていたという感じでしょうか。

雑誌コードは出版社にとって、ものすごく貴重なものなんです。今でも休刊した雑誌の雑誌コードというのは、数百万円から数千万円で取引されているはずです。

とはいえ、実際に「書店に置かれないもの」ということが前提にあったせいで、つまりこれらは「買う人が立ち読みができない本」だったわけで、作り手側はやりたい放題だったのもまた事実です。

要するに、「表紙だけエロで、中身はバンクとかアンダーグラウンドカルチャーばかりの内容の雑誌」が当時たくさんあったのです。日本のカルト文化とアンダーグラウンド文化の文字媒体の多くがそこから始まりました。

エッチな気持ちに燃えて表紙につられて買ったニイちゃんたちが「何じゃ、この訳のわかんない雑誌は!」と地面に叩きつけられていたそれらの雑誌を偶然拾って見た私は、その内容を見て驚きながらも歓喜したものです。


あー、日本ではこんなところでみんな活動していたんだ!」と。


欧米のアンダーグラウンドパンクの世界も、カルト映画の情報も、ナム・ジュン・パイクやローリー・アンダーソンなどのアーティストの活動なども、それらを最初に知った多くがそれら自販機本にあった情報でした。

現在、活躍している著名なライター、写真家、漫画家などもその「自販機エロ本」の仕事からスタートした人は相当な数にのぼると思います。



JAM と HEAVEN

こんなことを思い出したのも、先日、昔の古本をネットで探していましたら、多分絶対に見つからないだろうと思っていた昔の雑誌が、徳島県にある古本屋さんのサイトにあったのですが、その古本屋さんがスゴイ。「なんで徳島。ニシオギに来い!」と失礼ながら思ってしまいました。

それは、徳島県の古書ドリスという古本屋さんです。


そして、その書店の販売のページを見ていましたら、その「自販機本」の流れの中にある「ヘブン」という雑誌を発見したのです。これは大学時代に持っていたものです。驚いたのがその値段。


heaven-23.gif

そのページより。


「ひぃ! 9冊セットとはいえ、 4万8000円! まだどっかにないか!」と部屋を探した次第ですが、多分、もう持ってないと思います。大学時代に野菜を包む紙などに使った気がします(どんな学生生活)。この表紙を見ますと、当時の1冊の定価は 360円だったようですね。

この店の他の古本の価格を見ますと、料金設定はかなり良心的ですので、この価格でも現在の流通価格としては安いのかもしれません。

このヘブンそのものは自販機本ではなく、通常の雑誌でしたが、この前身の雑誌「ジャム」というのが伝説的な自販機本で、同じ発行人と編集人で作られていた雑誌です。


まあ、たとえば、ジャムにしても、エッチな気持ちで買ったお兄さんたちが、雑誌を開くと、こんなページ

heaven-2.jpg

がえんえんと続くとそりゃ怒りますよ(笑)。


当時は怪しい出版社がたくさんありました。

大学生だった私は、そういう中のあるひとつの小さな会社に電話をしたことがあります。

そうしたら、電話に元気な声の女の子が出たので、「バイトって募集してますか?」と聞いてみました。以下、思い出す大体の彼女との会話です。

女の子 「バイト歓迎です。でも、給料は出ないですよ」
わたし 「ああ、それは別にどうでもいいです」
女の子 「編集で何がしたいの?」
わたし 「パンクの記事書きたいです」
女の子 「え? バンド何好き?」
わたい 「○○とか○○とかですかね」
女の子 「そりゃいいですね。一緒に雑誌作りましょう」



ということで、バイトっていうか、時給がないですので、バイトなのかどうかよくわからないですが(笑)、やりたいことだったので面接に行こうとしたんです。東京の池袋という街にその出版社はありました。


そうしたら・・・・・!

「あ、交通費持ってなかった」と(笑)。

池袋まで行って帰ってくるには当時住んでいた場所から 500円前後かかって、「あー、こりゃ無理だ」と諦めて、そのまま数日が過ぎ、半年が過ぎ、10年が過ぎて、そして、結局現在まで 30年近く経ってしまいましたが、もはやそれらの出版社は存在せず、そのような文化(自販機本文化)もすでに存在しません。

これらの自販機本文化も、当時でも知らない人のほうが多かったです。

私自身、ニイちゃんの怒りと共に道ばたに打ち捨てられていた雑誌の中を見るまでは知らない世界でした。


いろんなことを知ったのはほとんど偶然でしたが、この30年とか40年間、積み上がりつつあるものはありますが、無駄だったことはほとんどなく、それは本当にありがたいです。


最近知った人類の創造神の話はトドメな感じですね。
何もかもがそこに結びついてきます。

死ぬ前までにそれを勉強して、この世でいろいろと楽しませてもらったことに感謝して死んでいきたいと思います。

まさに自分がヘブン(ダジャレ?)。


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posted by noffy at 17:34 | 雑記