2015年02月17日

【21世紀生まれの少女少年に聴いてほしい20世紀のロック100選】デヴィッド・ボウイ - ボーイズ・キープ・スウィンギング (1979年)

Boys-Keep-Swinging.jpg

「21世紀生まれの少女少年に聴いてほしい20世紀のロック100選」とか唐突に記しているのですが、別に特別な意味はないんですけれど、自分もずいぶん年をとりまして、細かいところは別とすれば、十桁での四捨五入で 100歳ということになる中での思い出補正日記です。

今は更新する時間もないですけれど、もともと音楽サイトなどもやっていたわけでして、そんな私が 20世紀に聴いていた曲の中で、「思い出が不随するもの」を、たまにご紹介しようと思います。

まずは子門真人のおよげタイ焼……いやちがう

ロックです。

最近は、いろいろと変な音楽を聴き過ぎて、耳や心が病んで来た後には、最近購入した 528Hz の音叉(In Deep の記事をご参照して下さい)でリフレッシュすればいいと気づきまして、毎日かなりの音楽を聴いている日々でもあります。

528Hz のリフレッシュさえあれば、どんなものを聴いても音楽の悪霊に取り憑かれはしません(どんな音楽聴いてんだよ)という確信と共に、特に最近は「思い出ロック」を聴いています。

20世紀は問題だらけの時代でしたけれど、悪い時代だったからこそ、反抗文化が花開いて、結果的に大変に楽しい文明時期として記録されるのではないかと思うことのできる部分もあります。

というわけで、最初は、私の人生(あるいは人生観)を少し変えたシンセサイザーという楽器に興味を持つキッカケとなったデヴィッド・ボウイの1979年の曲『ボーイズ・キープ・スウィンギング』です。

1979年頃は、私は高校1年くらいだったと思います。

当時、北海道では深夜に音楽ビデオを流す番組をやっていて、確か週に1度ほど、全日本プロレスの試合録画中継の後に、海外の MTV を流す番組を放映していました。

ある日のその音楽番組で見たのが、デヴィッド・ボウイのこの曲の PV だったのです。

David Bowie ~ Boys Keep Swinging (1979)


・この曲が入ったアルバム「ロジャー」は YouTube にフルアルバムがあります。


プロモ自体の構成も割と面白く、妙にオーバーアクションで始まるわりには、コーラスの女性がすべてデヴィッド・ボウイ自身だったというような結末を見せて、このプロモは、「全体がシュールなギャグだった」ことに気づいたりもしますが(プロモの最後はデヴィッド・ボウイ自身が演じる老婆の投げキッスで終わります)、それはともかく、この跳ねたリズムの非常に軽快な演奏の後ろで、

キーキーヒャーヒャーと、得体の知れないストリングスでもない不思議な音の「群れ」が鳴り続けている

ことに注目しました。

演奏の後ろで鳴り続いているこの奇妙な音の集団は何だろう?

と考えました。

この曲が、デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノによる曲であり、後ろで鳴り続けている奇妙な音は、グチャグチャなギターとバイオリンの音に加えて、ブライアン・イーノのキーボードだとか、あるいは多分シンセサイザーなどでのグチャクチャな音のかたまりであるようなことを知ったのは少し後のことでした。

YMO などの存在があったせいで、シンセサイザーという楽器については知っていましたが、それが単なるメロディ音の製作器というだけではなく「ノイズ製造マシンでもある」ということは知らなかったのです。

そして、このデヴィッド・ボウイの曲を聴いて以来、

「シンセサイザー欲しいな」

と思うようになっていました。

しかし、当時のシンセは最も安いものでも 10万円くらいはしたもので、高校生に自力で買えるようなものではありませんでした。

ところが、願えば叶う……とでもいうのでしょうか、それからしばらくして、私は地元の北海道の岩見沢という町で、他の高校の人たちから頼まれてキーボードを担当していたバンドでライブをおこなった後、見知らぬ男性から別の「誘い」を受けることになったのでした。

「オカくんだよね。うちのバンドに入らない?」

と言ってきたのは角刈り風の強面で、聞けばドラマーだそう。

そして、その後、そのバンドの練習を見に、稽古場のある美唄という町まで行きまして、バンドのリーダーと話をしていた時に下のような会話となりました。

リーダー「オカくんがバンドに入ってくれるのなら、シンセサイザーあげるよ」
わたし 「はい? シンセを……くれる?」
リーダー「ちょっと前に好奇心で買ったんだけど、僕はギター以外は使えなくて要らないから」
わたし 「機種は?」
リーダー「ローランドのシステム100だか何だか」
わたし 「それ……20万くらいするやつじゃないの?」
リーダー「あー、値段はよくわからない」
わたし 「ぜいたくな好奇心かよ!」


そうなんですよ。

このバンドのリーダーの男は、不動産屋のせがれで、馬鹿高いギブゾンのギターを何本も持つボンボンだったのですが、その上に、高校生なのに金髪の長髪をなびかせて、花形満ばりに車を運転する紛う事なき不良少年でもあり、まさに「不良ボンボン」とでも言うべき人物でした。

そして、このリーダー、本当に私(初対面)にそのシンセを「くれた」のです。

もちろんタダで。

下のようなシンセサイザーで、自力では今でも買えないかもしれないような価格でした。

system-100.jpg
・ローランド システム100


「ああ、シンセ欲しいけど、無理だよなあ」と思っていた時から、ほんの少し後に、私の元にはシンセが転がり込んできたのでした。

でも、私も「どんな高価なものでも自分に不要な物を持っていても仕方ない」という考えは普通で、これほど喜んだこのシンセも、高校を卒業する頃に手元にはなかったので、私も誰かにあげたのだと思います。

確か、新しいシンセを誰かからもらったか、安く譲ってもらったのだと記憶しています。

その時以来、「曖昧に願えば、何となく叶う」という繰り返しの人生ではあるのかもしれません。もちろん、大層なことを具体的に願っても、そんなものは叶いませんが。

そんなわけで、今でも、この頃のデヴィッド・ボウイの曲が好きであると共に、ボーイズ・キープ・スウィンギングを聴く度に、初めてシンセサイザーに興味を持った夜の感動を思い出します。


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