たとえば、私のような世代(1963年生まれ)の人間にとっては「若い者は体制に抵抗する」というのがしっくりくる感覚で、つまり、「若さとは反抗である」ということが自然だと思われます。しかし、ずっと下の世代を見ていると、その様子がどうも見えなくて、つまり、「体制に反抗的」だというのは、若さに起因するものではなく、その世代全体としての心理的な傾向なのではないかと思えるようになってきています。
このあたりはずっと考えていることで結論は出ていませんので今は書きませんが、「体制への懐疑」ということに関して世代間において致命的ともいえる差があるのではないかと考えるようになっています。
私は飲みに言った時とか、まあ、先日出てきたチャングムとか、若い人に「どうして今の若い人は従順なんだろうね」という質問をたまにしますが、今まで「その質問の内容そのものを否定した人はいない」のです。つまり、みんな自分でも程度の差はあれ、多くの若い人たちが「私は体制に対して従順だ」と自覚しているようなのです。
どうやら、私たち中年よりも若い人たちの方が「体制と今のシステムが崩れないでほしい」という方向があるような感じなのです。まあ、心の中ではどうかわからないですが、表面的にはそんな感じです。
そういうことを感じてから、コルマン博士の論文の
プラネタリーアンダーワールドの第6の日のミッドポイントは1962年である。このアンダーワールドの後半は1962年から72年である。この年に何が起こったのか思い出してほしい。
という下りが気になり続けていました。
私もこの期間に生まれているのですが、1962年から1972年というのはどんな意味がある期間だったのか。生まれることに意味はなくとも、この期間に起きたことにはどんな意味があったのだろうということが気になっていました。
コルマン博士はその時期にビートルズが生まれたことを上げていて、そのことによって、
この運動はそれぞれの国で特徴的な形をとって現れたが運動は世界的にシンクロしていた。すべての運動は、すべての権威を疑問に付し、体制に組み込まれることを拒否した。
という運動に展開していったのではないかと書いています。
政治や経済についてのことは私にはよくわかりませんが、音楽やストレンジ文化のジャンルなら私の得意分野です。
ということで、「1962-1972年に起きたカルチャー系の事象」の中で、「権威を疑問に付し、体制に組み込まれることを拒否した」方向を目指した事象をピックアップしてみました。
これは「その時期にあった文化全般」ではなく、「体制の否定に繋がる文化全般」の表だということにお気をつけ下さい。なので、クラッシック音楽や伝統的アートなどは基本的に入っていません。また、「世界的に影響を与えた」ということがももっとも大事なので、言葉などの理由で質は良くとも広がりにくかったもの(当時の日本の漫画など)も除外しています。
とりあえず、徹底的にピックアップしてそこから少しずつ排除していったのですが,それでも結構な量となってしまいました。
この期間に人類がどんなカルチャーを作ってきて、どんなものに熱狂してきたのかをご覧下さい。
たった10年間ですが、想像以上にすごい時代です。
ご存じのないものもあるかもしれませんが(むしろ全部よく知っていたら廃人)、どれも現在に至るまで何らかの影響は残り続けているものかと思われます。
なお、一般的な認知がされにくいものに関しては文末の●に関係動画や資料などへのリンクを張ってあります。
抵抗文化 1962-1972年
1962年 アンディ・ウォーホル、ポップアートの量産開始(アメリカ)
1962年 アンソニー・バージェス、小説「時計じかけのオレンジ」を発表(イギリス)
1962年 ビートルズ、デビュー(イギリス)
1963年 ナム・ジュン・パイク、世界初のビデオ・アート展(韓国/ドイツ)●
1963年 メロトロン(初期のサンプリング楽器)発売開始。サンプリングの歴史は現代音楽史上でもっとも影響の大きなもの。(アメリカ)●
1963年 ハイレッド・センター(高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之)、東京ミキサー計画を開始(日本)●
1963年 ハーシェル・ゴードン・ルイス、映画「血の祝祭日」を発表(世界最初のスプラッタムービー)(アメリカ)●
1963年 ウィリアム・バロウズ、「麻薬書簡」(The Yage Letters)を発表
1964年 キンクス、デビュー(イギリス)
1965年 オーガスタス・オーズリー・スタンリー3世、 LSD 工場を設立(サイケデリック文化とヒッピー文化の爆発的流行)(アメリカ)
1967年 ドアーズ、デビュー(イギリス)● ← (注意)これアメリカの間違いです。いろいろと考えるところもあるので、間違えたままにしておきますね。
1965年 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、デビュー(アメリカ)●
1965年 ジャン=リュック・ゴダール、映画「気狂いピエロ」を発表(フランス)
1966年 ジミ・ヘンドリックス、デビュー(アメリカ)
1966年 土方巽、暗黒舞踏派解散公演を行う(実質的な暗黒舞踏の世界への広がり)(日本)
1966年 特撮テレビ番組「ウルトラマン」の放映開始(日本)
1967年 寺山修司、劇団「天井桟敷」を結成(日本)
1967年 モントレー・ポップ・フェスティバル開催(アメリカ)
1967年 グレイトフル・デッド、デビュー(アメリカ)
1965年 スティーヴ・ライヒ、ループ曲「ピアノ・フェイズ」を発表●
1968年 スタンリー・キューブリック、映画「2001年宇宙の旅」を発表(アメリカ)
1968年 レッド・ツェッペリン、デビュー(イギリス)
1969年 ウッドストック・フェスティバル開催(アメリカ)●
1969年 「モンティ・パイソンズ・フライング・サーカス」放映開始(1969-1974)(イギリス)
1969年 ジュディ・ガーランド死去(同性愛解放運動の爆発)(アメリカ)
1969年 ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、ベッド・イン(反戦運動の一般化への影響(アメリカ)●
1969年 サルバドール・ダリ、チュッパチャプス(キャンディ)のロゴデザインを手がける(スペイン)
1970年 アレハンドロ・ホドロフスキー、映画「エル・トポ」を発表(メキシコ)●
1970年 灰野敬二、バンド「ロストアラーフ」を結成(日本)
1972年 ジョン・ウォーターズ、映画「ピンク・フラミンゴ」を発表。アメリカのカルト映画で最大の観客動員を誇る(アメリカ)●
1972年 アンドレイ・タルコフスキー、映画「惑星ソラリス」を発表(ロシア)
1972年 ジェラルド・ダミアノ、映画「ディープ・スロート」を発表(アメリカ)●
ここには挙げませんでしたが、日本では、唐十郎の状況劇場が1969年に機動隊に包囲された中で行った公演「腰巻お仙」や1970年のバンド「頭脳警察」も反体制的という意味では印象的なものです。
私が大人になった頃は、すでに1980年代で、このほとんどの文化は後追いだったのですが、どれも今に至るまで強烈な影響を持っています。
この中で私がもっとも強く影響、あるいはショックを受けたのは、
1963年 ハイレッド・センター(高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之)、東京ミキサー計画を開始
1968年 レッド・ツェッペリン、デビュー(イギリス)
1970年 アレハンドロ・ホドロフスキー、映画「エル・トポ」を発表
の3つです。
ハイレッド・センターに関しては、東京に出てきたとき、「東京ミキサー計画 - ハイレッド・センター直接行動の記録」という本が出版されていて、それで知ったのですが、電車や街頭で直接的なゲリラ芸術活動をする活動の記録でした。1963年は私が生まれた年ですが、そんな時にすでにこんなすごい試みが日本で行われていたなんて・・・と、これから暮らす東京での生活にドキドキしながら夢を見たものでした。
映画「エル・トポ」を東京で見たのは1986年頃ですが、これは1970年に公開された後に、ジョン・レノンがフィルムと上映権を買い上げたほどの映画で、70年頃のジョン・レノンが黒い服をよく着ていたのも、エル・トポの影響と言われていました。頭を殴られたような感覚になったほどの鮮烈な映画でした。
40年経ってみると退屈な世の中になってしまったかもなあ。
記憶だけでも楽しいですけれどね。
[どうでもいい追記] 眠すぎの日々 06.14
以前出ていた話題の「真夜中、あるいは早朝の定期的な覚醒」はなぜかだいぶん良くなって、目は覚めても、そのまま起きていなくても大丈夫なようになって、少し睡眠時間は増えているはずなのですが、ここ数日の日中の眠気が異常で・・・。
睡眠障害(?)みたいなことになってから、確かに午後など眠くなることは普通にあったのですが、最近のはスゴイ。睡眠薬でも飲まされたかのような強烈な眠気が日に何度か襲ってきます。これはもう抵抗できないほどのもので、生まれてから経験したことのないタイプのもの。症状としてはナルコレプシーと似ているのですが・・・そんな急になるものなのかどうか。
他にもいらっしゃったら、お仕事や車の運転をされている方は午後の眠気にお気をつけ下さいね。