
21歳の頃、神経症からパニックにまで陥った頃は、とにかく毎日結構苦しくて、まだ「心療内科」なんてものがこの世にあるとも知らずに、フランス人ばりに昼からワインをがぶ飲みして生きていました。
「ワインをガブ飲み」なんていうと、スノッブな感じですが、当時(今から 30年くらい前)住んでいた環境では、大容量のお酒で最も安かったのが「ワイン」だったのです。銘柄不明のワインが近所の酒屋で「一升800円」とか、そのあたりの価格で売られていました。甘いのではなく、普通のワインです。
そうなんです。
ワインが一升瓶に入っていた(笑)。
そういうのを飲んで昼も夜も過ごしたりしていました。
それで、最終的には 23歳の時に、「こりゃ自殺寸前だな」と自覚して、心療内科に駆け込んだわけですけれど、それがよかったかどうかは別として、今、私は生きています。
でも、その頃の苦しさというのは、その後も、周期的にやってくるのですね。
しかも、結構長いスパンで、正確じゃなくとも 10年とかの周期でやってきて、今がその時期らしいんですね。自分のことに「らしいんですね」という言い方は変ですけれど、客観視でもしないとやってられない面もありますし。
でまあ、わりと「苦しい」時が頻繁におとずれたりして、そのあたりを人前を含めて、ジェントルに(苦笑)やり過ごすには、やはりお酒を飲むとか、あるいは薬というのもありますけれど、他には、効果の理由は曖昧ではあるけれど、私には効果があることとして、
・お風呂に入る(暖まるのが理由なので洗ったりしない)
・お香を焚く
というのが、少なくとも私には多少の鎮静効果があります。
どちらも家にいないとできないですけれど、それだけに、最近は特に家を出るのが億劫になっています。
お香はアジアのものは昔から嫌いではなく、インドあたりのお香は結構試しましたけど、日本で売られているインド系お香の二大勢力として、
・HEM (ヘム)
というのと、
・Tulasi (トゥラシ)
というメーカーがあります。日本での販売勢力では、 HEM が圧倒している感じがしますが、私は HEM のは香りがキツくて、 Tulasi というメーカーのほうのものを使っています。最近は調子も良くない時にはよく焚いています。

インドのお香といっても、日本のお香などとあまり変わらないものもあり、ふと気づけば、自分の部屋が「仏壇のある部屋」的な辛気くささに包まれていることに気づいたりします。
ファルスの声
何とか落ち着いてくると、20代はじめの昔のことを思い出します。
とはいっても、人間は「体感」としては昔の苦しさを思い出せなくて、「まるで客観的に見ている自分の過去」ということになってしまいますが、その頃、苦しかった時によく聴いていた曲があります。
パンクですが、あぶらだこというバンドの Farce という曲です。
最近、苦しい時にその曲を聴いてみても全く状態は良くならなかったですけど(苦笑)、それでも思い出の曲でもあり、先日、歌詞を入れてアップしてみました。このバンドは、歌詞がほとんど聴き取れませんので。
あぶらだこ - Farce with Lyrics (1986)
私の好きだった当時のバンドで、レコードに歌詞カードをつけるようなバンドはひとつとしてなかったですが、このあぶらだこもそうでした。あぶらだこの歌詞は、後年になって少しずつ解明されてきたものです。

このタイトルの「 Farce 」はネットで、意味をみますと、
・演劇・映画の用語。英語ではファース。→笑劇
・詰め物料理→ファルス (料理)
となっていまして、料理でないとすると「笑劇」というほうの意味なのでしょう。
そして、話は飛びますが、ちょうど1年ほど前、やはりあまり調子が良くない時だったんですが、地元で入ったお店が、ほどよく荒んでいて(笑)、そこでビールなどをひとり飲んでいると、小さな音量で音楽がかかっていることに気づきました。
きれいな声の入る美しい曲でした。
その店のやや廃れた状況と、その音楽とのマッチングが妙に良くて、そのお店の、多分、私と同年代くらいと思われる女性店主に、
「この曲は何ですか?」
と尋ねると、
「テレサ・テンです」
と言われました。
「曲名はわかりますか?」
と聞くと、
店主 「×××××××」
わたし「WTF ? 」
店主の女性は台湾の方だったようで、中国語で答えてくれたのでした。
今住んでいる場所は、台湾人の方の飲食店などが多いのです。
聞き直すと、「ユンシェンキン・イェシェン」という曲だとのことでした。
家に帰り、その店主の「ユンシェンキン・イェシェン」を手がかりに、翌日、その曲を探してみたのです。そうしましたら、下の「雲深情也深」という曲でした。
ケ麗君(テレサ・テン) ~ 我雲深情也深(1977年)
それで、翌日、 Amazon で テレサ・テンの中国語の歌のベストアルバムを購入てみると、上の曲も入っていました。
「雲深情也深」の日本語での意味は、「雲は深く、愛も深い」という拍子抜けするほど単純なものですが、大衆歌謡の良さは歌詞のストレート性もあるのだと思います。
「億の神が地下水で眠っている」というような言い回しでしか自分の苦悩を表せない人たち(私もその範疇です)よりは、ストレートに言えるのなら、そのほうがいいですものね。
ちなみに、テレサ・テンを特に好きではない私のような人たちが、最大にテレサ・テンの魅力を引き出すには、「耳を立てないと聞こえないほど小さな音量で聞いてみる」というのがあります。
外を歩いていると、どこからかわからないけど、いい歌が聞こえている・・・という感じを作り出すのですね。
そんなこんなで、今日も朝になってしまいました。